立派、立派って。
お前は一人前の弁護士になれたのは親父のおかげだと思ってんのかよ?



「俺には関係ないし」


親父がどこへ行こうか俺には関係ない。
あの就寝前にかかってくる電話が当分ないことは確かだ。
それだけで俺の世界は一気に明るくなる。



ちょうどその頃、クラシックが一曲終わりを迎えた。



「富田、ここでいいから」


運転座席にいる富田に向かって言葉を投げる俺。その言葉に従うように富田は交差点を左折し、車を停止させた。


毎日そうだ。
学校に着いたわけではない。
学校まではまだ少し距離がある。
けど車を停めさせる。
理由は、この車で学校には行きたくないからだ。

もし送り迎えをしてもらっていると誰かに知られたら、面倒なことになるくらい分かってある。
からかわれて、はい終了。

そんなの、嫌だ。


だから学校の手前で降りて、そこからは自力で歩いていくのだ。


富田は俺を最後まで送りたいと思っているようだけど、絶対に嫌だ。