「クラス行こうぜ!」



更に増す人口密度。
もう酸素不足だ。
息があまり出来ない。
苦しい。
いろんな匂いが混ざっている。
女の香水の匂いや、ワックスの匂い。
混合して、何の匂いか分からなくなっている。


俺は軽く呼吸を止めて、沙紀の手を引っ張り、この場所から離れていく。


そして人があまりいない場所を選び、そこで立ち止まった。



「まじすごい人だったな…。てか聞いてくれ!俺、見ちゃったんだよ!」


呼吸を整える沙紀に向かって言葉を投げる。
沙紀は深く息を吐いて、きょとんとした顔を見せてくる。



「なに言ってるの…?」


「さっき、俺の隣にいた男がすげぇかっこよくて!つい見とれちゃったよ!」



言った後に後悔をする俺。
沙紀にこんなことを言って何になるんだよ。
絶対怪しまれるよな。
男の俺が男に『見とれちゃった』なんて言ったら確実にあっちに興味があると思われてしまう。


だから沙紀は俺の言葉を聞いたとき、一歩引いたような顔をしたのだ。



いや、待ってよ。
俺はそんな趣味ないって。