いつもそう。
ため息をどこで吐いたらいいか分からないのだ。

自分の部屋の中はもうすでに家政婦たちのため息で埋まっている。

俺はため息を自分の部屋ではあまり吐かない。

だってため息をしたら、それ以上に空気が悪くなりそうだから。


けど吐いてやろう。
ピカピカに磨かれた、富田の革靴に向かって。


ため息を革靴に吐いた俺は、なぜか勝ち誇った笑みを浮かべてしまった。


「部活は気分。つか迎えに来なくいいから」


こう言って、富田を見上げて不満の詰まった家から飛び出した。


目の前には、黒い車が止まっている。
日本車と違うところはハンドルの向きだ。
この車は外車であると言っているようなもんだ。

この車で毎朝学校近くまで行っている。

最初は楽だからいいと思っていたのだが、そんな考えをした俺がバカだと思った。


だって、この車は別名「睡魔を襲う車」なのだから。


富田の愛車か知らないが、この車に飽きているのは事実であろう。