携帯を手に取り、耳に当てる。
お前の声は鳥の囀ずりで起きるより、ずっといい。
「おはよ。沙紀」
『歩、おはよ!あたしワクワクしちゃって早く起きちゃった!』
「なにそれ、可愛すぎ」
沙紀との交際は順調だ。何も問題はない。
あ、ないと言ったら嘘かな。
そういえば司と明日香が付き合っているのだ。
それは中学二年生の夏明け、明日香から聞かされた。
二人が幸せになったのならそれでいい。
今もまだ付き合っているのかは知らないけど、もう関係ないこと。
俺は沙紀しか見ていない。
ずっと、ずっと。
これからもね。
中学三年生のときの受験戦争には悪戦苦闘をした。
目指すレベルが高すぎて、あとそれと沙紀と同じ高校にどうしても行きたかったんだ。
沙紀も清秀を目指していた。
二人で二人三脚で頑張って、見事二人に桜が咲いた。
その瞬間は嬉しくて涙を流したっけ。
これも二人にとって幸せのひとつ。
これからも沙紀を見ていられる。
浮気なんかするものか。