くだらないよ。
そんなのくだらない。


俺の心に刻まれた傷より小さいことだ。
お前に俺の惨めさ、分からないだろ?



「…俺はお前と沙紀を許さない。だからアイツに頼んだんだよ。アイツは俺の言うことを全部聞いてくれるからね」



不気味な笑みを見せる司。
その言葉に恐怖感を抱いた。


そして頭の中で何かが繋がる。



中庭の司と明日香。
廊下にいた女子。
教室での隼人の言葉。



もしかして、これは司が仕組んだことなの?



そう考えれば辻褄が合う。
お前が、沙紀を追い詰めているのか?



「俺のことを捨てた、罰だよ…」




もう司の瞳からは涙は跡形もなかった。
今見えるものは悪魔の表情をした司だけ。



「お前が…?何で、何の為に?」



「お前を俺の視界から消すためだよ…」



力が次第に抜けていく。理解不能だ。
なぜ一度愛した女を追い詰めるの?
罰だと言って苦しめるの?
それが彼氏だったヤツがすることかよ。


理解出来ねぇ。



俺は拳を握りしめ、力を込めて、司の右頬を殴った。
きっと俺を殴った富田の力には負けるだろう。

けどそれくらいの勢いだった。