涙がひとつ流れると、
愛がひとつ増える。


誰かがこんな言葉を言っていた。
誰だったかな?と思いだそうとすると、思い出せなくて。


司の涙を見ていたら、何故か同情してしまいそうになった。


自分では分からないけど、司の涙が俺の涙と似ている気がしたんだ。


これの涙は、愛がひとつ増えたのだ。



「…なに…お前?」



司に近寄って、司の顔を覗く。
司は涙を拭いて、ゆっくりと口を開いた。




「お前のせいで、俺と沙紀は別れたんだからな…」



俺のせいで?
どうしてだよ、俺なにもしてないじゃん。
何かしたって言うなら、勝手に沙紀を好きになったくらいだぞ?


けど司の言葉を聞いて、嬉しく思う俺がいた。
心の中で、ぴょんぴょんと弾んで喜んでいる。
俺は必死にそいつの行動を止めていた。


今喜んだら司に悪い気がして…。
ほら、また同情をする。


「は?意味が分かりませんけど?てか別れたんだ?」



にやりと怪しい笑みを浮かべて、司を挑発する。
案の定、司はその挑発に乗ったようだ。