それと同時に、沙紀に会いたいという感情が芽生え出す。
もしかしたら沙紀は今一人で泣いているかもしれない。
あの泣き顔が頭の中に浮ぶ。
その表情は記憶なのだけど、記憶を見ただけでも胸を締め付けられるくらい、辛い表情なのだ。
未だに教室は静かなまま。
この光景に信じられない人はたくさんいるだろう。
けど俺はどうでも良かった。
教室にいる生徒たちを、まともに見られない。
さっき隼人が言っていたことを、信じている人はこの中にも必ずいるはずだ。
そんな人たちが許せなかった。
「…隼人だけじゃない。お前らもだよ!!誰がそんな嘘言ったのか知らねぇけど、簡単に騙されんなよ!!何で真実を見ようとしないんだよ!!そういうのが一番人を傷つけるんだよ!!」
沙紀の泣き顔の記憶が、俺の涙腺を緩くする。
けどこんなところで涙など見せたくない。
俺はぐっと涙を堪える。
沙紀は泣いているかもしれない。
沙紀が泣いているときは、俺は笑顔で沙紀を包み込みたいんだ。