沙紀のことを知らないくせしてよくそんなこと言えるな。
人間性を疑うよ。



俺は怒りが我慢出来なくなったのか、隼人の胸ぐらを掴み、壁へと押し当てた。
教室はまだ静かなまま。俺はそんな周りの光景を、見ているヒマなどなかった。



「いってぇ…」



「沙紀が司と俺を二股してるって?バカじゃねぇの?俺は二股かけられるほどバカな人間じゃねぇし、沙紀は俺のこと好きじゃねぇよ。俺が沙紀のことが好きなんだよ」



ぐっと力を入れる。
隼人はなにかに怯えるような表情を見せて、黙って耐えていた。
隼人の体が震えている。そんな怖がることないのに。



そろそろ解放をしてやるか。
俺は隼人の胸ぐらを掴んでいた手を、床へと降り下ろす。
当然、隼人は床に倒れた。
がたん、と動く机と椅子が、その衝撃を表している。


隼人はまだ現実なのか夢なのか分かっていないのか、何度も辺りを見渡して、俺の顔を何度も見上げていた。



まだ俺の怒りは静まってはくれない。