「ごめん、私って人の顔と名前を覚えるのが苦手だから」


どちらかと言えば、苦手なタイプの女子だが、嫌いなタイプではない。

それでも、その豪快さにクラスのほぼ全員がこちらに視線を向けて注目されているのは嫌だ。


「いいよ、いいよ。

それよりもこっちこそ、ごめん。

私って声とか大きいから、クラスのみんなから注目されちゃったね」


最後の方は耳元に近付けて小さく囁くように言った。

豪快だが、かなり気配りはできるらしい。


「ありがとう。

私、人付き合いって凄く苦手だから、ちょっと誤解されるようなことも言ったり、するかもしれない。

そのときは注意してくれても全然いいから」


そう言うと、常神由美子は先ほどと同じように大げさに豪快に笑った。

今度はさっきの半分くらいの生徒にとどまったが、それでもまたしても私たちは多くの視線の的になった。


「やっぱり、由香のそういうところ好きだよ。

私のことは由美子って、下の名前で呼んでくれていいから」


よく分からないがどうやら気に入られたらしく、常神由美子から私は早くも下の名前で呼ばれていた。