目の前に広がる紅い紅い液体。

その液体が血だとわかるまで時間はかからない。


紅い血にまみれた女の死体、手についた赤黒い他人の血、手に持ったナイフ。


あぁ、また殺してしまった。


わたしに恐怖はなかった。

人を殺しても、いや、殺させられても、感情の変化はない。


これは、神がさせている。


なんで、わたしはこんなことをさせられているのだろう…。

いっそ、死んだほうが楽、かもしれない。

そう、何度思っただろうか…。


しかし不思議と死ぬことはできない。

ちがう、死ぬことを拒絶してしまう。


いくら感情がなくても、死への恐怖だけはなくならない。



そう、わたしは殺し続ける。

神がわたしをつかうことを飽きるまでーー。


カツンカツンという靴の音だけが暗闇に響いたーーーーー。