孤高の魚のレビュー一覧
読み終えた今、胃に重たい何かがぞわぞわする感じが続いています。登場人物がみな矛盾を抱えているからこそ、優しい。許せる人ってそういう人なんだなって思います。
痛みも切なさも悲しさも、全てが完成されていて心が休まりませんでした。 ぜひ、日常に疲れた予定のない休日に読んでいただきたいです。 平日の移動時間や就寝前に読むのはおすすめできません。 心を正常に保てなくなるくらい劇薬的効能が、この話にはあるのです。 冊子という媒体で読みたかったです。 ウェブ小説にしておくにはもったいない! 心揺さぶる素晴らしい小説でした。
読み終えた第一印象は誰もが抱えるブルーな世界を巧みにえがかれた作品、でした。 しっかり気を持って読まなければ溺れてしまいそうなブルーの世界。 何度もその世界に吸い込まれそうでした。 生きる意味、存在する意味、命の意味。 生と死。他人と自分。孤独と愛。 揺らめくテーマのなかに、それぞれのブルーな世界を見た気がしました。 失踪してしまった同居人の歩太。 主人公の歩夢であり、アユニ。 妹と名乗る七海。 キャバクラ嬢の尚子。 登場人物達の深い心理に触れ、どこかしら寂寞している関係に想いをよせ、彼等を通して大切な生についてを考えさせられました。 誰かと関わることは素晴らしく、けれど誰のために生きているわけでもない。 哀切溢れた、その作品を是非一読してみてください。 目に浮かぶ情景の先には、彼等の見る“ブルー”が見える筈です。
生も死も愛も、ひとによって価値観が異なり、 それを押し付けることや説くことは決してできない。 だけどこの作品からは、確かにそれを感じる。 ひとを好きになるということ。愛するということ。 そのいくつもの答えが、登場人物たちを通して語りかける。 待つのも、 探し求めるのも、 忘れるのも、 受け入れるのも、 別のカタチでのこすのも。 それらすべてが誰かの正解であり不正解で。 そしてたったひとりにとっての真実でもある。 だけど思うのは、世界はきっとひとりでは、生き難いということ。 おそらく語るより読んでもらった方が良い。 たぶん愛や生や死とは、他人に説かれるよりも自分で感じてはじめてわかるものだと思うから。 そこに初めて、自分だけの答えを見つけられるのかもしれない。 胸に強く迫る作品。 ぜひ、ご一読。
突然失踪した歩太、歩太の元彼女、歩太の妹を名乗る七海を絡めて、淡々と紡がれる物語。 ブルーを基調とした静かな空間に、登場人物それぞれの息遣いと秘めた思いが交錯して、胸にじんと響いてくるものがあります。 誰かのためではなく、自分のために生きるという言葉が印象的でした。 生きること、人との関わりを考えさせられる素晴らしい作品です。
静かな海の中を、ひとり泳ぎ続けているようでした。 失踪した同居人「歩太」 歩太の妹を名乗る「野中七海」 そして僕、「歩夢」が野中七海と共に、歩太の軌跡を辿りながら紡がれていく物語。 『孤高の魚』とは、とても秀逸なタイトルを付けられたなあと。 空気を吐き出す音だけを聞きながら、時折光る群青の海をひたすら彷徨い続けるイメージがずっと頭にありました。 とにかく読んでみて欲しいと、言うほかありません。 「最後」とは言えないラストまで、彼らが歩み、考え、呼吸をし続けた日々を感じて欲しい。 生きること、というよりは、他人と繋がり合うことの意味を思いました。 人はどこまで自分の為、そして他人の為に生きられるか。 彼らがこの物語の中で考えだし、そしてこれからも考えていくことを、わたしもこれから共に考えていくんだと思います。 名作に巡り会えました。ぜひご一読を。
冒頭から独自の雰囲気に惹きつけられます。 読み進めていくにつれ 人間味のある登場人物たちを通して 『生きる』とはなんなのかを とても考えさせられました。 そんな重いテーマにも関わらずスラスラと読めるのは作者様の文章力と、説得力。 さらにはストーリー展開にあります。 謎が謎を呼び、いったいこの人たちはどこへ向かっているのか、早く知りたい気持ちにかきたてられます。 もしかして もしかして ずっと自分の中で考えながら読んでいました。 そして歩夢と七海に訪れるラスト。 すばらしいです。 こうして言葉を形にするのも躊躇してしまうくらい。 読後はしばらく余韻に浸り濃いコーヒーを飲みたくなりました。 携帯小説にしておくのは勿体ない。 素直にそう思います。 素敵な作品と出会えたこと、とても嬉しいです。 ありがとうございました。
冒頭から心をがっちりつかまれました。 特に描写がすばらしく、独特というか、なんとも言い表せない空気を纏って 身震いするほど、好きになりました。 それだけじゃない。 レビューには書ききれない、語れない、文字が足りない。 2LDKの部屋に、まるでそこに自分も居て、 空気として存在して、そこで起きている出来事を見ているかのよう。 まさか、と意識が先走る瞬間が、あたしは2度あった。 あの時のざわめきが忘れられない。 仙台の、冬の街を歩く時。 きっとこの物語のシーンを思い出すでしょう。 どこかに居る、彼女のことを思って。
まず、タイトルが秀逸です。 ありふれた、もっと意地の悪い言い方をしてみれば釣りワードを盛り込んだタイトルとストーリーが大量生産されていくこの場所で、このタイトルと、そしてこのストーリーを書き切る著者様の心意気に拍手。 こんな場所で埋れていい作品ではありません。書籍として文芸コーナーに陳列されるべき作品です。 行方不明の男。 彼を求める女、彼女に惹かれる男。 複雑で静かな狂気を孕んだ多角関係、行方不明の彼のごとく見えない真実、見えない本心、見えないラスト。 彼女はまさに孤高の魚。 光の刺さない海の底を彷徨って徐々に光を求めて浮上していくような、息苦しさすら心地良いと思える作品です。 あなたもぜひ彼等と共に彷徨い、足掻き、一筋の光にも似たラストまで辿り着いてください。 (書籍にしてくれないかなぁ。絶対買うのに!)
同居人が姿を消した。 そんな同居人宛の手紙を見てしまったことが、彼にとっての始まりだった。 そして同居人を尋ねてきた彼の妹であり、手紙の差出人である女の子との出会いが。 ゆっくりと進む話は、とても穏やかで、だけどどこか不安定でぎこちない。だからこそ、気になってそわそわして、頁を捲ってしまう。 独特の雰囲気を感じる作品でした。 だけど私はそれがすごく好きです。 頁数は少なくない。けれど、気がつけば最後の頁に辿り着いていた。彼と彼女と同じように作品を読んでいる間何かを探し彷徨って、そして、ふたりの辿り着いた場所に私もつれて行ってもらえたようです。 この作品を、書籍として手元に置いておきたいと、何で今ネットで読んでいるのだろうかと悔しく思う程でした。 多くの人に見つけてもらいたい作品でした。