………


それは確かに、どこか予言めいていた。

夢の中の歩太は少しおどけてはいたけれど嫌に真剣で、異質だけれどもやっぱり歩太であって別人ではなかった。


『……とにかく気をつけろ』


そう言って去ろうとする歩太の、どこか素っ気ない態度はやっぱり僕の知っている歩太であるように思えた。

歩太は誰にでも、具体的な指示をしたり注意したりする事はなかったけれど、
「気をつけろ」
とか
「それはやばいぞ」
とかいう事はよく口癖にした。


『どう気をつけたらいいんだ?』


僕はわざと、そう歩太に尋ねた。


『それはわからない』


案の定、歩太はそう曖昧に答える。


『ただ……』


『ただ?』


………


『回ってしまった歯車は、止められない場合ももちろんある』


いよいよ予言めいている、と僕は思った。