けれどもやっぱり、夢の中の歩太はどこか異様だった。
どこがどう変かと訊かれても、正確には答えられないのだけれども……


………


『ところで、彼女の事なんだけど……』


僕は早速、夢の中の歩太に野中七海の事を切り出そうとした。

けれども、『彼女』という言葉を聞いた途端に、歩太の美しい顔が突然に歪んだ。


『やめてくれよ』


そう言った歩太の言葉は、まるで吐いて捨てる様だった。


『巻き込まれたくないんだ』


続けて歩太が言った言葉も、語調がすごくハッキリとしていて何だか僕には不自然に感じられた。

僕の知っている歩太はいつも冷静沈着で落ち着いていたから、僕は夢の中の歩太が本当に歩太なのかすら疑うほどだった。


『どうゆうこと?』


僕は比較的落ち着いた口調で、夢の中の歩太にそう問う。


『……そのうちにわかる』


『そのうちに?』


『そう、そのうちに』


夢の中の歩太は、少し上目遣いに僕を見て、今度は少しおどけた調子で笑った。
その笑みもまた、なんだか異質だった。