まるで、今までずっと固く固く閉じていた殻を、少しずつ破るように……
芯の奥の方から、本音を絞り出すような、野中七海の声。
「理由なんかないよ」
僕は、そうキッパリと呟く。
「君がここにいるのに、理由なんかない」
………
もういいじゃないか、十分苦しんだ。
と、僕は彼女の横顔に無言のまま訴える。
意味や理由なんかいらない。
ただ呼吸をして。
食べ物を口にして、コーヒーを流し込んで。
時々煙草に火をつけて。
眠って。
お喋りをして。
笑ったり時には怒ったり。
それだけでいい。
「いつか然るべき時が来たら、僕達は勝手に死ぬんだ。
ただ、それだけだよ」
「………」
「運命なんて安っぽい言葉だけど、一咲さんも歩太も、決められた時に死んだんだ。
例えそこに意志があったとしても、それも含めて決められていた事なんだ。
君はただ、流れに身を任せただけだし、それは責めるようなことじゃない」
そう。
それは高い所から低い所へ水が流れるように。
そうして一筋になって、穴へ落ちていくようなものなのだ……きっと。