野中七海は、何も言わない。
ここには、冷蔵庫の低いコンプレッサー音もない。

……静かだ。
静かで、耳が痛い。
何だか、頭がくらくらする。


僕は自分の身体を放り投げるようにして、乱暴に彼女の隣へ座り込んだ。
ベッドが僕の重みを受けて沈み、その動きに合わせて彼女の身体が揺れた。

彼女は相変わらずぼんやりとしている。
その横顔は、何を見ているのか、それとも何も見ていないのか……わからない。


………


暫く黙って、彼女の横顔を見ていた。

暗闇に目が慣れてきたので、さっきよりは幾分かはっきりと見える。

白い肌はキメが細かく、つるりとしてとても綺麗だ。
反射するオレンジ色の微かな光、それだけでも、男をハッとさせるほどに。


………


「わからないの」


彼女の小さな唇が動く。


「わたし、どうしたらいいのか、わからないの」


彼女の息遣いが、徐々に早くなっていく。


「パパもアユも、もういないのに……わたしはどうして生きているの」


けれども芯の強い声。


「一咲は死んだのに……どうしてわたしは生きているの」