胸の内をごく僅かに波打っていた僕の感情は、野中七海の物を言わない瞳を見ているうちに、また怒りへと近付いていくようだった。
……沸々と、静かに蘇る。
彼女の罪の告白を聞いた時に抱いた、怒涛のような感情。


「僕は、歩太が君にしたことを……絶対に許さない」


決して言葉にはしまいと思っていた。
言ってしまっても、どうする事もできないのだから。

けれどもう、僕にはどうしても我慢ができない。
僕が今、僕自身を保つためには、この気持ちを言葉にしてしまわなければいけない。

そうでもしないと……
僕だってどうにかなってしまいそうなのだ。


彼女をくるむこの白いカバーを剥ぎ取って、無理矢理に引き寄せ、滅茶苦茶にしたって僕のものにしてしまえるのなら、いったいどんなに楽だろう。

歩太がそうしたように。
男を利用して彼女を取り込めるのなら……


けれども臆病者の僕には、それができない。
どうしたってそんな自分が、許せないのだ。


「僕は……歩太とは違う」


もう一度そう言葉にしてみる。