項垂れた指の先から、体温と一緒に僕の気力も抜け落ちてしまうような感覚だった。
放心したまま、僕は暫くの間、白にくるまれた野中七海の姿を眺めていた。

……彼女の身体は華奢で。
うんと力を込めて抱き締めれば、ポキポキと音を立てて折れてしまいそうなくらいに。

こんなに危うい彼女の身体を、男の身勝手な欲に任せて貪る訳にはいかない。
少なくとも僕には……そんな勇気はないのだ。


………


「僕は歩太とは違う」


それから口をついて出た僕の言葉は、はっきりとした響きで彼女へと投げ掛けられた。


「僕は、君をそんな風に傷付けるつもりはない」


そんな僕の言葉を、彼女はぼんやりとした表情で受け止めている。


「男がみんな、歩太のように君を扱うわけじゃない。
少なくとも僕は、そんなことを望んでるんじゃないよ」


「………」


彼女は相変わらず、ただ僕を見上げている。
今はそこに、特別な感情は読み取れない。