「だって、アユニ」
けれども白いカバーに包まれた野中七海は、まるで子供のような無邪気な声で答える。
「これからは、わたしと一緒に、居てくれるんでしょう」
「………」
そのあまりに無垢な彼女の声に……
言葉が出ない。
……ああ。
彼女は、肌を合わせる事以外の、男と女が共に居る理由を、もしかしたら知らないのかもしれない。
15歳の時に歩太に引き剥がされたまま、彼女の幼い気持ちは止まってしまっているのだ。
まるで父親を求めるような眼差しで、僕を見上げている彼女。
「それとも、アユニも行ってしまうの?」
そう言う彼女の顔を見詰める。
「アユみたいに、わたしから離れてしまうの?」
細い首筋が……闇に溶けてしまいそうだ。