状況が掴めない。


何故、野中七海が僕の目の前に裸で座っているのだ。
そして何故、そんな目で僕を見ている?
何かを懇願するような目で。


僕に抱かれるつもりなのだろうか?

よく見ると、白い肩が微かに震えている。
寒いのか、それとも怯えているのだろうか。
薄い茶色の乳輪が固くなって、乳首が上を向いている。

……もしかして、僕を試しているのか?

僕の中にある「男」が、いったいどんな生きものなのかを……探るために。


………


一瞬で、色んな思いが僕の中でせめぎあった。

あれほど憧れていた彼女の裸身を目の前にしても、僕の身体は不思議と冷静だった。


「何やってるんだ。風邪ひくよ」


僕は缶ビールを放り投げ、自分のベッドからシーツのような布団カバーを剥いだ。
それを、力任せに彼女の身体に巻き付ける。

怒りに近い感情が、僕の中に沸き起こっていた。