急かされるようにシャワーを浴びる。

備え付けの石鹸で簡単に顔と身体を洗い、フェイスタオルで適当に拭くと、新しい下着とシャツ、厚手のスウェットとジーンズを着込んだ。


……さっきからずっと、胸の奥がザワザワと音を立て始めていた。

一刻も早くここを出て、彼女を捕まえなければいけないような気がして、気が急いた。


……早く、早く。
一刻も早く。

沸き起こる緊張感が、僕を責め立てる。


………


バスルームのドアを開けると、部屋の照明が暗くなっているのに気が付いた。
ベッド脇のライトだけが、オレンジ色に光っている。


「……どうした?」


ベッドの端に、野中七海が座っているのがシルエットで分かる。
明るいバスルームの照明に慣れていたので、よく見えない。


「もう、寝る?」


そう訊ねても、返事はない。
疲れてしまったのだろうか。