駆け足でホテルへと戻る。
けれども、506号室のドアを開けると、野中七海の姿は見当たらなかった。
……まさか?
一瞬、僕の脳裏を不安が過る。
コンビニの袋をぶら下げたまま、慌ててベッドの側へ駆け寄った。
彼女の荷物は、きちんとそこに、置いてある。
………
「アユニ、お帰りなさい」
背後から声がして、僕は安堵の溜め息を漏らした。
「……ああ。
シャワー、浴びてたんだ」
振り返ると、彼女の頬は上気していて、髪がほんの少し濡れていた。
白いシャツワンピースに、厚手のカーディガンを羽織っている。
「アユニも、入ってきたら?」
「ああ、うん。そうだね」
そう、どうせなら、シャワーを浴びてさっぱりした後で、乾杯をしよう。
鞄から新しい下着とシャツを引っ張り出し、僕は小走りでバスルームに入った。