エレベーターを降りて、僕達は各々の部屋に別れる。
「ごめんなさい……アユニ。今日は、夕食も一人で食べてくれるかしら。
わたし、何だか、食べられそうにないわ」
ドアの前で、少し離れた僕に野中七海は微笑む。
その顔色はここからはっきりとは見えないけれど、多分、よくない。
「うん、わかった。何か欲しいものがあったら、言ってくれればいいから」
そう言って微笑む僕の顔もまた、青白く見えるだろう。
………
部屋に入り、煙草を一本吸ってから、僕はさくらのママの携帯に電話を入れた。
事情を話し、4日は休ませてもらえるようにお願いすると、ママは意外にも快く承諾してくれた。
『がんばんなさいよ、歩夢』
そう言って、ママは随分機嫌がよかった。
受話器ごしにママの声と重なって、子供の笑い声が聞こえてくる。
きっと、お孫さんと一緒にいるのだろう。