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ああ……いったい、何て無力なのだろう。
現実に対して、人の思いはいつも、途方もなく無力だ。
ただ、祈ることしかできない。
ただ、願うことしか。
その情けなさから逃げるようにして、僕達はただひたすら、歩く。
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「ごめんなさい、アユニ。わたし、体が、冷えちゃったみたい。
少し、部屋で休むわね」
ホテルのエレベーターの前に立つと、彼女は虚ろな視線で僕を見た。
マフラーをハラリと落とすと、白くて細い首が露になる。
いつか写真で見た、白樺の幹のようだと思った。
「そうだね。少し、横になった方がいい。
何かあったら、部屋に電話をくれればいいから」
それが、何か彼女のためにはならないだろうかと、僕は精一杯の笑顔を作る。