………
改めて……
……僕は歩太の事を何も知らなかったのだ、と思う。
僕が知っていた歩太は、彼の持っているほんの一部の側面で。
その歩太の事ですら、僕はきちんと見ようともしなかった。
それなのに、歩太は僕を選んだのだ。
自分の最期を一緒に過ごす相手を……この、僕に。
………
「アユはよく、ここでスタミナ定食を食べたわ。
……想像がつかないでしょう?」
「はい、おまたせー」
野中七海の声を遮る様に、匂いのいい定食が僕らのテーブルに運ばれてきた。
それは本当に美味しそうで、温かく、田舎の食卓を思い出させた。
「アユは母子家庭で育って、お母さんをとっても大切にしていたから……きっと、ここの食事が懐かしかったのね」