僕達はホテルの側にあるコーヒーショップで朝食を摂り、アーケードを駅に向かって歩いた。
歩太と一咲さん、それから野中七海が住んでいたマンションは、仙台駅の東口を出て少し歩いた所にあるらしい。
………
……野中七海は黙っていた。
小さな唇をギュッと結んだまま、コーヒーショップを出てから、ずっと。
「僕も、何度か仙台へ来たことはあるんだけど……東口を出るのは初めてだ」
それなので僕が呟いた言葉は、独り言となって虚しく足元に落ちる。
………
空気がとても乾燥していた。
唇が乾いてカサカサする。
空を見上げると、薄暗く厚い雲が何層にも重なって広がっていた。
「雲行きが怪しくなってきたね……雪が降りそうだ」
そう思わず口にしても、返事はない。