小綺麗なビジネスホテル。
僕と野中七海、それぞれのキーをフロントで受け取ってからエレベーターに乗る。
「じゃあ、6時半に、ここで」
エレベーターを降りてから、そう約束をした。
402号室と403号室。
僕達の部屋は隣同士だ。
野中七海が部屋へ入るのを密かに見届けてから、僕もドアノブへと鍵を差し込む。
ドアを開けるとベッドと机、それから右手には狭いユニットバス。
小さい部屋だけれども、暖を取り、体を休めるのには充分だった。
「さて……」
独り言を呟きながらベッドに横たわる。
彼女を取り巻く緊張感から解放され、大きな溜め息を吐く。
「これから……歩太を探すってわけか……」
両腕を枕に天井を見上げながら、そう言葉にしてみる。
けれども何だか、実感がない。
……歩太を探す。
それは一体、どういう事なのだろうか。
そんな当たり前の事すら、僕にはよくわからなくなっていた。