「北の方は、雪がすごいみたいなのよ。ニュースでやってたわ」


野中七海は珍しくテレビをチェックしていたらしい。
僕達のキッチンにはテレビがあるけれど、僕も歩太も、野中七海もほとんどそれを気にしたことがない。
テレビを付けたがるのはいつも尚子だけだった。


「仙台はあまり雪は降らないけど、きっとここよりもうんと、寒いわね」


彼女は視線を空へと投げ、これから向かう仙台へと思いを馳せる。
その横顔は白く、表情は読み取りにくいけれど、瞳の奥に揺れるのは確かに、希望に近いものかもしれない。


「……風邪をひかないように、しないとね」


僕は何かを誤魔化すように、そんなことを呟いてみる。