「見送りには行けないけど、頑張ってね、歩夢。
あんたはただ、ナナミちゃんの側に居てあげればいいんだからね」


帰り際、野中七海に気付かれないように、尚子がそう耳打ちしてきた。


……ただ、側に居てあげればいい。


果たして本当にそうなのか、僕にはわからないけれど。
野中七海はいつも、本当には誰の助けも必要とはしない。
いつも一人で、何もかもを決断してしまうのだから、やっぱりそれでいいのかもしれない。


………


おそらく彼女は、彼女の選択と解釈で、歩太の存在を見つけることができるだろう。
言うなれば僕は、それを見届けるだけの、頼りないボディーガードというわけだ。