「決めたんだろ。後は進むしかない」


工藤さんの言う事はもっともで、僕は頷くしかない。


……決めたんだ、間違いなく、自分の意志で。


………


神妙な顔付きの工藤さんの背後では、大きなクリスマスツリーが目映い光を点滅させている。
僕と工藤さんだけが、この店にやって来たクリスマスから取り残されているようだった。


「頼むぞ。ナナミちゃんの事」


そう言って工藤さんは、僕に煙草を一箱差し出した。
工藤さんが愛煙している銘柄だ。
そのフィルムの隙間に、綺麗に畳まれた壱万円札が差し込まれていた。


「餞別だ」


工藤さんもまた、僕と同じように不安を隠しているのかもしれないと思った。

それから少し照れた様に、

「発破かけた俺にも責任があるからな」

と苦笑した。