「でもね、パパが好意的だったのは、わたし達を監視するためだったの。
……狂っていたのはわたしではなくて、パパの方だったのよ。
死んだのは一咲ではなく、わたしだと思っていたのかもしれないわ。
だけどしばらくして、わたしはまたアユと引き離された。
理由はよくわからないわ。
パパの何か気に入らない事があったのかもしれない。
そうしてわたしは、センセイのところに閉じ込められたの。
パパは……わたし達がした事を許せないまま、死んでしまったわ。
癌だったそうよ」
………
トン、トン、トン
……トン。
ふいに、彼女のリズムが止まる。
「一咲が死んで……みんなボロボロだったわ。
何もかもが、危うい糸でやっと繋がっているような、そんな毎日だった。
それでも、ここでアユと暮らしていたわたしは幸せだった。
アユが側にいて、わたしを充分に可愛いがってくれていたもの。
アユもすっかりやつれてしまっていたけれど、わたし達は本当に幸せだった。
二人がここで寄り添っていられることは、この上ない、たった一つの救いだったのよ」