本当を言うと僕は、これ以上、彼女の話を聞いていたくはなかった。
いかにして彼女と歩太が愛し合ったかなど、僕は知りたくもない。
歩太は、一咲さんと野中七海の両方を愛していた、と彼女は言う。
その行く末は、僕にだっていくらか想像はできるのだ。
そうして今、歩太がここに居ないという事は……
結果的に歩太は、姉の一咲さんを選んだのかもしれない。
……野中七海ではなく。
………
「ちょっと、煙草を買って来るよ」
そう言い訳を用意して、席を立った。
僕のジーンズのポケットには、昨日買ったばかりの煙草が入っていたけれども、僕には少し頭を整理する時間が必要だった。
返事をしない彼女を残して、僕はキッチンを出る。