尚子が韓国映画に浸っている間、僕はお風呂にたっぷりのお湯を溜める。
後で、僕と尚子が一緒に入るためだ。
尚子は、ベッドに入った後は必ず一緒にお風呂に入りたがる。
その準備が整っていないと、尚子はすぐにへそを曲げるのだ。
………
僕と尚子の間には、例えば尚子が夢中になっている韓国映画のような純愛はない。
最初こそは、歩太を失った尚子を慰めるための、一種の愛情表現の一つの包容であった。
尚子が僕の優しさという包容に応え、足を開くのまでにそう時間はかからなかった。
僕だって男なのだから、正直、下心がなかった訳ではない。
『ああゆう女は、優しくしてやれば簡単にやっちゃえるよ』
歩太もよく、尚子の事をそんな風に言った。
尚子が僕の愛撫に応えた時、歩太の言った事は本当に正しかったのだとも思った。
………
けれども僕は、自他共に認める冴えないただの大学生だ。
尚子のような百戦錬磨な女が、本気で僕なんかを相手にしてくれるはずはない。