僕は自分のカップと彼女のボーンチャイナに、濃いめにインスタントコーヒーを作る。
フワリと、白い湯気が大きく立ち上った。
温かいうちに、一緒に飲もう。
いつも彼女が用意してくれるコーヒーの味には到底及ばないけれど、たまにはインスタントコーヒーもいいだろう。
………
「まだ、寝てる?」
いつもとは逆の立場だ。
僕は彼女の……歩太の部屋の前に立って声をかけてみる。
「おーーい」
ふざけた様な大声を出してみるけれど、ドアの向こうからの返事はない。
耳を澄ませてみる。
しん、とした冷たい空気が漂って来るだけだ。