「あの部屋もさ、どうするの?
歩夢はさ、歩太が帰って来るとでも思ってるの?」
今度は睨むような視線で、尚子が僕を見る。
僕が家賃の事などを考えているのを、見透かされているのだろうか。
けれどももちろん、歩太が戻って来るかどうかなんて、そんな事は僕にはわからない。
けれども確かに。
僕は歩太に戻って来てもらわないと困る。
……そう思ったけれども、言わなかった。
言えば、尚子は鼻で笑って僕をバカにするだろう。
『ほうらね、歩夢はそうなのよ。自分の事しか考えてないの』
そう言って笑うに決まっている。
そんな事を、尚子にだけは言われたくないものだ。