「仙台ねぇ……」
そう言ったママの視線は、カウンターの上をゆらゆらと游いだ。
何か言いた気にしている。
ママは仙台について何か、知っているのだろうか?
「……わたしも、歩太くんは仙台へ行ったんだと思うわ。
七海ちゃんにもいつか、そう話した事があるの。お兄さんは仙台へ行ったんじゃないかしら? って。
昔住んでたって、聞いたことがあったからね」
「でも……」と、そこでママは小さな溜め息を吐く。
「わかってるんですって、言ったのよ、彼女。
もしかしたら……って思ってるんだけど、自分にはまだその勇気がないって。
自分が完全に壊れてしまうんじゃないかって……怖いんですって」
……壊れる?
完全に……?
咄嗟に、キッチンで震え出した彼女の姿が僕の脳裏に浮かんだ。
そうして、彼女の唇から呟かれた理解不能な言葉達……