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尚子のクリームソーダのグラスが、蛍光灯の光を白々しく反射している。
その冷めた白を見ながら僕は、本から視線を上げた時の鋭い歩太の眼目を思い出していた。
それは縁なし眼鏡の奥で、静かな青白い光を湛えていた。
その視線に僕が暫く見とれていると、歩太はいつもこう言って笑ったのを覚えている。
『歩夢、君に見とれてもらえるなんて、僕は光栄だ』
と。
そう言えば歩太はいつも、物静かなだけの僕を、過大なくらい評価してくれていた。
『歩夢はいつも、気持ちがニュートラルな状態にある。
誰のことも君は、過大評価も過小評価もしないだろう?
いつも、ありのままを見極めようとしている。
だから僕は君と暮らしていけると思ったし。
……いつも、僕は君だけは信頼していけると、信じてるんだ』
そう言って歩太は、僕に笑いかけた。
そうしてとびきり濃いコーヒーを、入れてくれたのだ。