……ミヤベのおばさん?
センセイ?

いったい、何の話だろう。

僕の頭は少し混乱し出した。
けれども僕の見る限り、今の彼女は至って『まとも』である様に思える。

とはいえ、彼女の過去について何も情報を持たない僕が、何を本当と捉えればいいのか検討も付かないのは、確かに当然なのだけれど。


………


「どうして、そんな所に?」


僕は極力、何でもないことを質問するように、ごく自然にそれを尋ねてみた。
その答えに、彼女の大きな過去が隠れていることは何となくわかっている。


「パパがね、わたしを隠してたのよ、ずっと。
山の中に」


……隠してた?
パパが?


僕は声にならない言葉を、煙草の煙と一緒に静かに飲み込んだ。