「今、尚子が帰ったところだよ」


僕の言葉に、彼女はキョトンとした表情を見せた。

顔色が……あまりよくない。
唇だけが、かろうじてピンク色を保っていた。


「……ああ……尚子さんが……」


まるで思い出した様に、彼女が呟く。


「寒いんじゃない?
ストーブの温度、上げようか」


「……うん、ありがとう。
……少し、頭が痛いの」


「風邪かな。よくないね。
少し横になる?
あったかいお茶をいれるよ」


僕はテキパキとファンヒーターの温度を上げ、それから小走りでヤカンに火をかけた。

……何だか気が焦る。


「ありがとう、アユニ」


アユニ……

僕は彼女のその言葉を背中で受けながら、ホッと胸を撫で下ろした。

いつもの野中七海だ。