「歩夢さ、ナナミちゃんと歩太が恋人同士だったって事は、知ってる?」


突然、尚子はベッドから起き上がって、僕に向かい合った。


……恋人同士?

確かに、野中七海と歩太が特別な関係だった事は、僕にだって容易に想像できる。
歩太の妹だと彼女は名乗っているけれども、それは恐らく血の繋がったという意味での兄と妹ではないのだろう。
それについて、具体的に彼女の口から、何か聞いた事はないのだけれど。


「……なんとなく、そんな気は」


僕はそう曖昧に答える。


「二人ね、一緒に暮らしてたんだって、ずっと」


そう言って尚子は、わざとらしい目付きで僕を見た。
多分、面白半分に僕の反応を窺っているのだ。


それから尚子は、胸元に垂れた栗色の髪を時々指で弄びながら、何かを思案する様にゆっくりと口を開く。