「……歩夢ってさあ」


突然の尚子の呼び掛けに、覆っていた顔を上げると、ベッドの上から意味あり気に笑う、尚子の視線がある。
僕が思わず身構えると、

「ナナミちゃんの事、好きだよね」

と、僕にだけ聞こえる様なわざとらしい小声で尚子が言う。


「……うん?」


僕は答えに迷い、それから誤魔化す様に眉を上げた。
尚子の前でそれを素直に認めるのは、何だか癪に触る。


「ごまかしてもダメ。わかるし……」


工藤さんにしろ尚子にしろ。
僕の感情はそんなに分かりやすいのだろうか。

自分でも気が付ついていない様な気持ちを、ピシャリと当てられたりするのだから、気が抜けない。