それから暫くの間、僕達は黙ったままでいた。

尚子は天井をじっと見つめ、口を開かない。
何か考え込んでいるのか。
何かを言おうとして言葉を選んでいるのか。
どちらともつかない表情だ。


僕もまた、今、何かを話す気にはなれなかった。

ドアの向こうの、キッチンの様子が気になって仕方がない。
けれども今、あそこに僕の居場所など……ない。


「ハアアア……」


僕はテーブルに肘を付き、手の平で顔を覆いながら、今度は声になる程の溜め息を吐く。

何だか、もう。
僕にはどうしようもなかった。

僕にできる事は、歩太の真似事だけなのだ。
ましてや父親の様になど、なれるものか。


「……ハア……」


考えれば考える程、僕の口からは溜め息が溢れる。