「とりあえず、尚子は僕の部屋で、ちょっと休んでて……」


僕は尚子にそう提案した。
この妙な緊張感の中では、また悪阻がくるかもしれない。


「え……でも」


そう言って、尚子は躊躇いを見せる。


「いいから、そうしよう」


僕はそう言って尚子の背中を押しながら、そっと、二人でキッチンを出た。


………


何か……
触れてはいけないものに触れてしまった様な、見てはいけないものを見てしまった様な……
そんな気持ちだった。

そうしてまた、野中七海自身、この状況を僕達にあまり見られていたくはないだろうと思った。

野中七海はまだ震えているけれど、さっきよりは幾分落ち着いてきている。