カチン、カチン



彼女の指の間から、握っていた箸が音を立ててこぼれ落ちた。

視線はまだ、宙を漂ったまま……
彼女の大きく見開かれた目が、何を捉えているのか……わからない。


唇から溢れる、言葉の意味も。


いったい、この状況をどうしたらいいのか……
僕は妙に冴え始めた頭で考えていた。


ガタガタガタガタ……


相変わらず、野中七海の椅子は大きな音を立てている。

小刻みに震える彼女の唇からは、意味不明な呪文の様な言葉が、吐息に近いトーンで溢れていた。

今度は、うまく聞き取れない。