彼女に、いったい今、何が起きている?

冷静に、冷静に。
僕が狼狽えていてはいけない。
僕はそう、自分に言い聞かせる。

………


「どうしたの?」


トイレから戻った尚子が、キッチンに入った途端、二人の妙に緊迫した雰囲気に気が付いて、足を止めた。


「……ナナミちゃん?」


尚子が不思議そうに、野中七海へと歩み寄ろうと足を踏み出すと、突然、野中七海の体が大きく震え出した。


ガタガタガタガタ……


尚子がそれに驚いて、咄嗟に僕を見る。
視界の端だけで、僕はそれを感じた。


「七海を……七海を責めているのね?
七海がいけない子だから……だから……」


ガタガタガタガタ……


椅子が揺れて床に音を立てるほど、野中七海の体は震えていた。
それを押さえるように、自分の両肩をギュウと抱き締めるように掴んでいる。