けれども確かに、僕の知らない所で、運命の歯車は回り出しているのかもしれない。
飛んでもなく強い力で。
そんな、いつか見た歩太の夢の事を、僕は今でも思い出す。
『……僕達が思っている以上に大きな力が働いて、頭から、まるで津波のように、何もかも奪われることもあるって事だよ』
夢の中で歩太はそう言っていた。
まるで預言者のように。
それは僕の身にも起こる事であり、すでに起こりつつある事でもある。
………
……それでも構うものか、と僕は思う。
幻想は、やはり幻想でしかない。
確かな形や温度を持った僕が、生活という武器を振りかざして立ち向かおうではないか。
どんな幻想にも。
『アユニ』
『二番目の歩太』
今はまだそれでもいい。
けれどもいつかは『飯田歩夢』として、彼女に認められたい。
僕の中で芽生え始めたそんな気持ちは、近頃の僕を強く奮い立たせている。