過去は、いつだって薄れていく一方のはずなのだ。

歩太がいない事も、僕と二人で暮らしている事も、いつかは野中七海にとって当たり前の日常となる。

そんな何気ない日々の生活の中で、彼女が少しでも僕の存在に気が付いてくれればいい。

それが、彼女の側に居る事のできる僕の、たった一つの願いだった。


「僕」という仮面を被った歩太の代わりも。
いつかは彼女の前でハッキリとした意思を持つ事ができる。

僕はいつだって、それだけは信じていたいのだ。