それ以前にも、ずっと。
僕は冷静を装いながら、自分の情けなさを隠し通してきたはずだったのだ。
いつだって……
……いつから僕は、こんな風に誰かに、自分の存在価値を求めるようになった?
………
僕は、揺れては上る煙草の煙の……
その淡い白を見ながら、キッチンで湯気立つコーヒーを思い描いてみた。
彼女の入れてくれるコーヒー。
それはとても、いい香りがする。
歩太の好きなコーヒー。
歩太の……
……ああ、そうか。
いつから、ではない。
野中七海だからだ。
僕は、彼女の前だからこそ、ただ僕でありたいのだ。
それだけだ。
歩太も尚子も関係ない。
………
僕はきっと、野中七海の事が好きなのだろう。
多分。
工藤さんが言うように、独り占めしたいのだ。
歩太なんかいなければいい。
多分。
僕は今、そう思っている。