「は、ふーー……」


僕はそんなモヤモヤした気持ちを、煙と一緒に大きく吐き出してみる。

吐き出しても、吐き出しても……
白い息と煙は闇に紛れていくのに。

胸の奥に蟠りが残るのはなぜか?


僕は野中七海に……

もっと落ち込んでいてほしかったのだろうか?
僕のように。


もっと傷付いていてほしかったのだろうか?


僕の失言に。
僕の……言葉に。


そんな事を思ってしまってから僕は、大きく首を横に振る。


何という浅はかな欲だろうか。
僕はいったい、何様のつもりなのだろうか。

彼女を傷付けたいなんて、馬鹿げてる。


………


彼女と向かい合ってしまえば、僕はいつだってこんな風になってしまう。

情けない男に成り下がってしまう。


僕はいつからこんな風になってしまった?

いつから……


………


『求めすぎては駄目なんだ』

さっきの工藤さんの言葉が、ふいに頭に蘇る。


けれどもそれは何て難しい事なんだろう。

………いや、でも。

僕はいつだって、そうしてきたのではなかったか?


歩太とも尚子とも、微妙な距離を保ち続けてきたはずだ。