………


『はい、スナックさくらでございます』


ちょっとだけ緊張しながらさくらに電話をかけると、ワンコールの後ですぐに、あの野中七海の声が受話器を通して僕の耳によく響いてきた。

その、まるでいつもと変わらない明るい彼女の声を聞いて、僕は思わずホッと小さな溜め息を吐く。


「……あ、僕です。歩夢です」


『アユニ?』


受話器ごしに僕を呼ぶ彼女の声は、想像していたよりずっと明るくて、僕は思わず頬が緩んでしまう。


「……うん」


……よかった。

彼女はそんなに、怒ってはいないのかもしれない。

機嫌を直してくれたのだろうか?

それとも……
情けない僕に、気を使ってくれているのかもしれない。