お店の壁に飾ってある、大きな木製のアナログ時計を見ると、もう七時半を回ろうとしていた。
野中七海は……
彼女はあれからどうしただろうか。
アパートの鍵は、彼女がいつ戻ってもいいように開けてきた。
キッチンの明かりも付けたまま出てきた。
……もう、さくらに出勤している頃だろうか。
「あ……僕、ちょっと電話を」
そう言って僕は席を立つ。
お店に電話を入れてみよう。
そろそろ小百合さんがママを迎えに行く時間で、いつもなら、僕と野中七海が店番をしている時間帯だ。
ママの携帯にも、一応連絡を入れておいた方がいい。
僕はジーンズにねじ込んでいた携帯と煙草を取り出しながら、店の外へ出た。
頬に当たる風が、もう震えるほどに冷たい。
椅子の背に掛けたままの上着を持って出て来なかった事を、僕は少しだけ後悔した。